最新の省エネ基準改正とその意義:住宅選びにおける等級を解説

最新の省エネ基準改正とその意義:住宅選びにおける等級を解説

住宅の省エネ基準が大きく変わろうとしています。政府は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、住宅の省エネ性能強化に本腰を入れ始めました。
今回の省エネ基準の改正がどのような内容で、私たち消費者にどんな影響があるのか、省エネ住宅選びに役立つポイントとともに詳しく解説します。

 

□省エネ基準の最新動向とその影響

省エネ基準の義務化を盛り込んだ改正案が今国会で成立する見込みです。
これまで努力目標に過ぎなかった省エネ基準が義務化されれば、新築住宅の省エネ性能は大きく底上げされることになります。
そもそも省エネ基準とはどのようなもので、今回どう変わるのでしょうか。

1:省エネ基準の概要
省エネ基準は建築物省エネ法という法律で定められ、建物の規模や地域に応じて必要な断熱性能を規定しています。
最高等級の「平成28年基準(断熱等級4)」が現在の指針となっています。
一方、住宅性能表示制度では「断熱等性能等級」という客観的な断熱性能の評価基準も設けられています。

2:日本の省エネ基準は世界最低レベル
しかし、平成28年基準はほぼ20年前の平成11年基準と変わらず、先進国の中では最低レベルと言われてきました。
しかも努力目標でしかなく、結果として「冬寒く夏暑い」非省エネ住宅が大量に供給され続けてきたのです。

3:今回の改正の背景と概要
2050年のカーボンニュートラルや2030年の温室効果ガス46%削減目標の実現に向け、住宅の省エネ化は待ったなしの状況です。
国交省によると、今回の改正では省エネ基準の底上げと高い性能への誘導、小規模を除く新築住宅への省エネ基準適合の義務付けなどが盛り込まれる見通しです。
これにより、消費者は高性能な省エネ住宅を選ぶことが可能になります。
一方、住宅業界はより高い省エネ技術の開発と普及が求められることになるでしょう。

 

□断熱等級と省エネ等級の評価基準を解説

省エネ住宅選びで押さえておきたいのが、「断熱等級」と「省エネ等級」という2つの評価基準の違いです。
どちらも品確法という法律に基づく基準ですが、それぞれどのような意味を持つのでしょうか。
新しい等級区分も交えて詳しく見ていきましょう。

1:断熱等級の定義と等級区分
断熱等級は正式には「断熱等性能等級」と言い、品確法で定められた断熱性能の指標です。
昨年10月に等級6と7が加わり、現在は等級1〜7の7段階で区分されています。
等級1は無断熱、等級2は1989年の旧省エネ基準、等級3は1992年の新省エネ基準、等級4は1999年の次世代省エネ基準に相当します。
等級が上がるほど断熱性能は高くなります。

2:新設された上位等級の意味
注目は新設された等級5以上です。
等級5はZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)と同水準の高断熱を表します。
ZEHは高断熱と高効率設備、創エネで年間のエネルギー収支をゼロにする住宅で、国も普及を推進しています。
等級6はZEHを上回る高断熱で、HEAT20のG2グレードに相当します。
HEAT20は2020年を目処とした超高断熱基準で、G2はZEHよりさらに高い断熱性能を意味します。
等級7はHEAT20の最高グレードG3と同水準の断熱性能となります。

3:省エネ等級の定義と等級区分
一方の省エネ等級は正式名称を「一次エネルギー消費量等級」と言い、品確法に基づく住宅の総合的な省エネ性能の指標です。
断熱性能だけでなく、暖冷房や給湯、照明など住宅で使うエネルギー全体の消費量で評価します。
等級1〜5の5段階で、等級4がZEH水準、等級5はさらに高い省エネ性能を表します。

 

□省エネ基準の変遷と現在の基準

省エネ基準は1980年の制定以来、段階的に強化されてきました。
現在の基準であるH28省エネ基準の前身となった主な基準と、その内容を振り返ってみましょう。
そしてH28省エネ基準の具体的な評価方法を理解することで、省エネ住宅選びに役立てていきましょう。

1:省エネ基準のこれまでの変遷
省エネ基準は1980年の制定以降、1992年の新省エネ基準、1999年の次世代省エネ基準、2013年のH25省エネ基準、2016年のH28省エネ基準と、主に4回の改正・強化が行われてきました。
H28省エネ基準はH25省エネ基準から数値的に大きな変更はありませんが、基本となる現行基準です。

2:H28省エネ基準の概要
H28省エネ基準は外皮性能と一次エネルギー消費量の2つの指標で省エネ性能を評価します。
外皮性能は外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の日射熱取得率(ηAC値)で評価し、住宅の断熱気密性能を表します。
一次エネルギー消費量は暖冷房、換気、給湯、照明の各設備のエネルギー消費量を一次エネルギー(石油換算)に統一して評価し、住宅全体の省エネ性能を表します。

3:基準適合の計算方法
UA値とηAC値は住宅の断熱仕様から計算します。
令和元年省エネ基準の地域区分に基づき、外皮面積の合計と日射熱取得率から求められる基準値以下であることが求められます。
一次エネルギー消費量は暖冷房、換気、給湯、照明の4設備について、床面積あたりの各設備の設計一次エネルギー消費量を計算し、それを合計して基準値以下であることを確認します。

 

□まとめ

今回解説した省エネ基準の改正と新しい断熱等級、省エネ等級の内容は、私たち消費者が省エネ住宅を選ぶ上で重要な指針となります。
断熱等級では等級4以上、省エネ等級では等級4または5を満たす住宅を選ぶことで、快適性と経済性を両立した暮らしが実現できるでしょう。

高断熱高気密な住宅は、冷暖房の効きが良く室内環境が安定するため、健康面でもメリットがあります。
光熱費の大幅な削減も見込めます。

省エネ基準の義務化で、これからの新築住宅の省エネ性能は着実に向上していくはずです。
ただし、法律で定める最低基準をクリアするだけでは、真に快適な暮らしは実現できないかもしれません。
断熱等級6以上、省エネ等級5といったより高い基準を視野に入れることをおすすめします。

省エネ住宅は私たち自身の暮らしの質を高めるだけでなく、地球温暖化防止など社会的にも大きな意義があります。
埼玉県内で家づくりを検討している方は、ぜひご相談ください。

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