現代社会において、環境意識の高まりや光熱費の上昇を背景に、住宅の省エネルギー性能への関心が高まっています。
特に新築やリノベーションを検討する際、省エネ基準への適合は重要な選択肢の一つとなっています。
本記事では、2025年から義務化される新築住宅の省エネ基準適合について、その背景や詳細、そして住まい手に与える影響を解説します。
省エネ基準の理解を深め、環境にも家計にも優しい住まいづくりのヒントを掴んでいきましょう。
□2025年からの大きな変化: 新築住宅の省エネ基準適合義務化とは?
2024年現在、省エネ基準適合義務化とは非住宅建築物のみに課されていますが、2025年4月以降は全ての新築住宅にも適合が求められるようになります。
この大きな転換点を理解するために、省エネ基準の概要と適合プロセスを詳しく見ていきましょう。
1: 省エネ基準の構成要素
省エネ基準は主に2つの指標で構成されています。
1つ目は一次エネルギー消費量で、暖冷房や給湯など住宅で消費されるエネルギー総量から創出エネルギーを差し引いた値が基準以下であること。
2つ目は外皮性能で、外壁や屋根、窓などの断熱性能を評価し、熱の損失量を一定値以下に抑えることが求められます。
2: 適合義務化の対象と審査プロセス
2025年以降、規模に関わらず全ての新築住宅が省エネ基準適合の対象となります。
建築主は設計段階で建築士から省エネ性能の説明を受け、確認申請時に適合性審査のための書類を提出。
完了検査でも適合が確認されることになります。
つまり、設計から竣工まで一貫して省エネ性能が評価される仕組みが整えられるのです。
3: 省エネ基準適合住宅のメリット
基準に適合した住宅は、高い断熱性と効率的な設備により大幅な省エネが見込めます。
光熱費の削減はもちろん、温度変化の少ない快適な室内環境も実現。
加えて、環境性能の高さは不動産価値の向上にもつながるでしょう。
2025年の義務化を機に、省エネ住宅の選択はますます身近になっていくと言えます。
□法改正の背景と環境政策の進展
ここで、なぜ2025年に省エネ基準の適合義務化が行われるのか、その背景にあるカーボンニュートラル目標と建築物分野に求められる役割を確認しておきましょう。
1: 2050年カーボンニュートラル宣言
2020年、菅元総理は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を宣言しました。
2030年度には2013年度比46%削減という高い目標も掲げられ、建築物分野でのCO2削減が急務となったのです。
省エネ基準の義務化は、この宣言を実現するための重要な一手と言えるでしょう。
2: 建築物分野に求められる省エネの加速
日本のエネルギー消費の約3割を占める建築物分野では、業界が一丸となった省エネ対策が不可欠です。
非住宅では2017年から段階的に基準適合の義務化が進められてきましたが、いよいよ2025年、住宅にも規模を問わず一定の省エネ性能が義務付けられることになりました。
もともとは前倒しの予定でしたが、申請・審査体制の整備に時間を要したため、2025年に改めて設定されたという経緯があります。
3: 省エネ政策の変遷と今後の展望
これまでの省エネ政策は、非住宅の義務化や住宅の説明義務など、段階的に範囲と基準を強化してきました。
2025年を節目に更なる深化が予想され、2030年にはより高い省エネ性能が住宅の標準となるかもしれません。
省エネ基準の動向は、脱炭素社会の実現に向けた指標の一つと捉えることもできるでしょう。
建築主も建築士も、環境政策の潮流を意識した住まいづくりが求められる時代と言えます。
□省エネ基準とは何か?明確な基準と認証方法
省エネ基準適合義務化を前に、基準の中身を詳しく理解しておくことが大切です。
一次エネルギー消費量と外皮性能という2つの評価軸について、具体的な数値基準と、基準クリアが住宅設計に与える影響を見てみましょう。
1: 一次エネルギー消費量の評価方法
一次エネルギー消費量は、暖冷房・換気・照明・給湯など住宅で消費されるエネルギー量の総和を、各エネルギー源の一次エネルギー換算値で評価したものです。
省エネ基準では、この消費量が地域や住宅規模ごとに定められた基準値以下であることが求められます。
一次エネルギー消費量の削減は、高効率な設備機器の採用や再生可能エネルギーの活用など、総合的な省エネ設計によって達成できます。
2: 外皮性能の評価指標
外皮の断熱性と日射遮蔽性を評価する指標として、UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(平均日射熱取得率)が用いられています。
UA値は外皮全体の断熱性能を表し、値が小さいほど熱の損失が少なくなります。
ηAC値は日射による熱取得の度合いを示し、こちらも値が小さいほど日射の影響を受けにくい住宅と言えます。
断熱材の性能向上や開口部の工夫など、外皮設計が省エネ基準の達成に直結することがわかります。
3: 地域の特性に応じた基準値
省エネ基準は、日本を8つの地域に分けて、それぞれの気候風土に適した数値基準を設定しています。
例えば寒冷地では断熱性重視の基準となる一方、温暖地では日射遮蔽性がより重視されます。
こうした地域ごとの特性を考慮することで、無理のない省エネ設計が可能になるのです。
建築主も建築士も、建設地の省エネ基準を確認し、地域に根差した住宅づくりを心がけましょう。
□まとめ
2025年の省エネ基準適合義務化は、新築住宅の設計と選択に大きな影響を与えるでしょう。
一次エネルギー消費量と外皮性能という明確な評価軸により、省エネ性能の高い住宅が当たり前になっていきます。
ただし、基準を満たすだけでなく、地域特性を活かした快適な住まい作りが重要です。
設計者と施主が省エネの意義を共有し、環境性能と居住性の両立を目指すことが、これからの住宅に求められているのです。
省エネ基準適合義務化は、私たちの住まい方に新しい選択肢をもたらします。
単なる規制ではなく、環境に優しく、快適で健康的な住まいを手に入れるチャンスで、豊かな暮らしを実現するためのヒントと捉えることが大切でしょう。
2025年を機に、省エネ性能の高い住宅が当たり前の時代を迎えられることを願っています。
埼玉県で家づくりを検討している方は、ぜひご相談ください。