注文住宅を建てる際、多くの方が気にするのは建物そのものの価格ですが、実はそれ以外にもさまざまな諸費用が発生します。
たとえば、登記に関する費用や税金、住宅ローン関連の手数料など、本体価格以外で100万円以上の出費になることも珍しくありません。
そこで今回は、注文住宅建設にかかる諸費用の内訳について、詳しく解説します。意外と馬鹿にならない諸費用、しっかり準備して、予算不足を防ぎましょう。
注文住宅の諸費用の内訳
注文住宅を建てる際には、建物本体の工事費用だけでなく、さまざまな諸費用が発生します。
諸費用の総額は、建物本体価格のおよそ1〜2割程度が目安とされており、たとえば建物価格が3,000万円の場合、300万〜600万円前後を見込んでおく必要があります。
これを見落としてしまうと、後から「こんなにかかるなんて知らなかった…!」と慌てることにもなりかねません。
諸費用は大きく分けて、次のようなカテゴリーに分類されます。
・税金や手数料:登録免許税や不動産取得税、司法書士報酬など
・家の新築時:地盤調査や建築確認申請費、ライフライン引き込みなど
・住宅ローン関連:保証料、団信保険、登記費用、火災保険など
・その他:家具・家電の購入、引越し、カーテンや外構工事など
注文住宅の諸費用【税金や手数料】
注文住宅を建てるときの税金や手数料など事務的な費用は、必ず発生するものです。あらかじめ予算に組み込んでおかないと、資金計画が大きく狂う可能性があります。
所有権移転登記に必要な登録免許税
土地や建物の所有者が変更されたときには、登記が必要です。 その際に課されるのが登録免許税で、固定資産税評価額に対して所定の税率(建物土地は2.0%など)が適用されます。
・住宅の建物:建物の固定資産評価額×0.4%→新築は0.15%に減税
・土地の所有権移転登記:固定資産評価額×2.0%
・抵当権の設定登記:借入額×0.4%
登記の種類によって税率が異なるため、詳細は司法書士や不動産会社に確認するのが安心です。

不動産取得税
不動産取得税は、土地と建物それぞれに対して課税されるもので、不動産を取得したタイミングで、一度だけ支払うものです。原則として固定資産税評価額の4%ですが、現在は特例措置により3%となっています。
また、一定の床面積を満たす住宅については、不動産取得税の優遇措置があり、建物評価額から控除される金額が設けられています。一般の新築住宅の場合は1,200万円、長期優良住宅の場合は1,300万円が建物評価額から控除されるため、税負担を軽減することができます。

印紙税
建築請負契約書や土地の売買契約書など、契約書を交わす際に必要なのが印紙税です。 たとえば、1,000万円〜5,000万円の契約金額なら1万円の印紙が必要になります。
印紙は文書1通ごとに必要となるため、複数の契約書がある場合は注意が必要です。

固定資産税・都市計画税
住宅が完成して引き渡されると、毎年固定資産税と都市計画税が発生します。 これらは不動産を所有している限り毎年課税されるもので、土地と建物それぞれにかかります。
現在は、新築住宅の固定資産税は3年間の2分の1に軽減される特例措置もありますし、自治体の条例によって軽減されることもあります。
司法書士報酬
登記手続きを司法書士に依頼する場合、その報酬が発生します。 相場は5万〜10万円前後で、登記の種類や地域によって差があります。 法務局に自分で申請することもできますが、専門知識が必要なため、費用はかかっても専門家に依頼した方が良いでしょう。
仲介手数料
土地を不動産会社を通じて購入した場合、仲介手数料が発生します。 一般的には「(土地価格 × 3%)+6万円+消費税」が上限となっています。 土地価格が2,000万円の場合、仲介手数料は約72万円となりますので、見落としがちですが大きな金額です。

注文住宅の諸費用【家の新築時】
注文住宅では、建物本体の工事費用以外にも、建築前後に必要なさまざまな費用がかかります。
地盤調査費用・土地測量費用
まず建築前に行うのが、地盤調査と土地の境界測量です。 地盤調査は、その土地が建物を支えられる強度を持っているかを調べるもので、費用は約5万円〜10万円が相場です。
土地の境界が不明確な場合には、測量士による土地測量が必要となり、20万円〜50万円前後かかることもあります。

建築確認申請費用
建築基準法に基づき、新築工事を行うには建築確認申請が必要です。 申請費用の相場は10万円前後ですが、建物の規模や申請先(自治体・民間審査機関)によって変わります。
ライフライン(水道など)の引き込み工事
上下水道・電気・ガスといったライフラインの引き込みは、土地にすでに整備されている場合もありますが、未整備の土地では工事が必要です。 それぞれ、費用の相場は20万円〜50万円前後とされていますが、敷地内に引き込む距離によって金額が変わってきます。

地鎮祭、上棟式にかかる費用
日本の住宅建築では、地鎮祭(じちんさい)や上棟式(じょうとうしき)を行う慣習が残っています。 必須ではありませんが、多くの方が「家づくりの節目」として取り入れており、それぞれ3万〜10万円程度が相場です。形式や規模によって費用も変動するため、ご家族と話し合って検討しましょう。

注文住宅の諸費用【住宅ローンに関するもの】
注文住宅を建てる際、多くの方が利用するのが住宅ローンですが、その手続きにもさまざまな関連費用が発生します。
保証料
住宅ローンを借りる際、金融機関は借主がローンを返済できなくなった時のリスクに備えて、保証会社を利用することが多いです。その際にかかるのが保証料です。 一括前払いの場合、借入額の1〜2%程度が相場で、たとえば3,000万円のローンなら60万円前後となることもあります。

団体信用生命保険料
団信とは、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害になった際に、ローン残債を肩代わりしてくれる保険です。 多くの銀行でこの保険への加入が必須となっており、主に3つの種類があります。
・一般団信
・ワイド団信
・疾病保障付き団信
金利に含まれているケースと、別途保険料がかかるケースがありますが、一般団信なら保険料が不要なケースが多いです。
火災保険料・地震保険料
住宅ローンを利用する場合、火災保険への加入はほぼ必須です。 保険期間や補償内容によって費用は大きく異なりますが、一般的には10年分の一括払いで15万〜30万円程度が相場です。
また、火災保険とセットで地震保険に加入することもできます。こちらは任意です。

注文住宅の諸費用【その他】
注文住宅が完成しても、すぐに快適な暮らしが始められるわけではありません。実際の生活に必要な設備や家具の購入、引越しなどの費用も、見積もりに含めておかないと、引き渡しのときに慌てることになります。
カーテン・照明など建物本体に含まれない設備
注文住宅では、建物の本体工事に含まれていないカーテンレールや照明器具、エアコン、物干し金物などの設備が意外と多くあります。 これらを一式そろえるとなると、数十万円単位の出費になることもあります。
たとえば、
・カーテン・ブラインド類:15万〜30万円
・照明器具:10万〜20万円
・エアコン(複数台設置):30万円以上
といった具合に、住める状態にするまでに100万円以上の費用がかかるケースもあります。

引越し費用
注文住宅への引越しにも当然費用が発生します。 引越し費用は家族の人数や荷物の量、移動距離、時期によって異なりますが、10万〜30万円程度が一般的な目安です。
特に3月〜4月の繁忙期は料金が高くなるため、可能であればシーズンオフを狙うのが賢明です。
家具家電の購入費用
新築を機に家具や家電を一新する方も多く、そのための予算もしっかり確保しておく必要があります。 最低限必要なものとしては以下のようなものが挙げられます。
・ソファ、ダイニングテーブル、ベッドなどの家具
・冷蔵庫、洗濯機、テレビ、電子レンジなどの家電製品
これらを一式そろえると、数十万円〜100万円以上かかる場合もあります。

注文住宅の諸費用を賢く節約するには
注文住宅では、建物本体の価格にばかり目が行きがちですが、実は諸費用こそ工夫次第で大きく差が出るポイントです。
住宅ローンは手数料も含めて複数の銀行を検討する
住宅ローンを選ぶ際は、金利だけでなく、
・事務手数料
・保証料
・繰上げ返済手数料
などの諸費用も含めて比較することが重要です。
たとえば、ある銀行では保証料が無料でも手数料が高い、別の銀行では金利が低くても事務手数料が高額、といったことはよくあります。比較サイトを活用するほか、FPに相談するのもおすすめです。
電子データで契約する
印紙税法では、課税対象は「紙の文書」に限定されており、PDFなどの電子データで交わされる契約書には印紙税がかかりません。つまり、建築請負契約や土地売買契約を電子契約(電子署名付き)で行えば、印紙代がまるごと不要になります。
ただし、契約内容を印刷して紙で保管した場合は課税対象となるケースもあるため、電子契約を導入する際は、形式や運用ルールをしっかり確認しましょう。

シーズンオフに引っ越しをする
引越し費用は、時期によって大きく変動します。 3月・4月の繁忙期は料金が高騰するため、5月以降〜11月の閑散期にずらすことで数万円〜十数万円の節約が期待できます。 また、荷造りや荷解きを自分で行う「節約プラン」なども検討すると、よりコストを抑えられるでしょう。
地鎮祭・上棟式は簡略型や省略も検討する
伝統的な行事である地鎮祭や上棟式は、必ずしも実施しなければならないものではありません。 簡略な形式や家族のみでの実施にすれば、3万〜5万円の節約につながります。地域や家族の意向に合わせて検討してみましょう。
まとめ
注文住宅を建てる際には、建物本体の費用だけでなく、さまざまな諸費用がかかることを忘れてはなりません。税金や登記、住宅ローンの手数料から、引越し費用や家具の購入まで、その総額は建物価格の1〜2割程度に上ることもあります。
こうした費用は「あとから気づいた」では済まされない、大きな出費につながるため、事前の把握と計画的な資金管理がとても重要です。
税金は省略できませんが、住宅ローンの選び方や引越しのタイミング、電子契約の導入など、ちょっとした工夫で諸費用を賢く節約することもできます。
ご自身やご家族の暮らしに本当に必要なものを見極めながら、ムリなく、ムダなく、理想の住まいづくりを進めていきましょう。